近大サミット2019に参加してきた。挑戦し続ける大学が提案する新しい教育
※ この記事は私がRepresentativeを務めているLinkbayesにて投稿した記事を移管したものです。
大阪を中心として全国6地点に学部をもつ日本最大級の私立大学『近畿大学』
そんな大学で行なわれる一大イベント『KINDAIサミット』
2年ぶり5回目となる今回は令和初ということで、過去最大の著名人を集め開催された。
近大サミットとは
日本経済の中枢で活躍する本学出身のリーダー達が集い、目指すべき目標に向かう姿を共に描き、共有する。
さらに、次世代のリーダーを担う本学在学生が日本経済を学び、新たな日本社会に向けたビジョンを生み出すサミットを開催する。 https://www.kindai.ac.jp/kindaisummit/”
業界の先輩とやる気のある力強い学生が共に考え、情報を交換する近畿大学ならではのイベントです。
各セッションの内容に入る前に、なぜ私が参加したのか簡単にまとめておこうと思います。
参加理由
教育機関としての近畿大学
最大の理由は教育機関としての“近畿大学”が本当に魅力があるのか確かめたかったからです。
近畿大学はご存知の通り「黒マグロの完全養殖に成功した」大学であり、巷ではマグロ大学などの名称で親しまれて(ネタにされたり)います。
このマグロは近大マグロとも呼ばれ、実際に飲食店で販売されています。
『企業』としての近畿大学は非常に面白です。では『教育機関・大学』としての近畿大学はどうでしょうか?
この大学の学生だからこそ言えるのは「学部によっては教育水準はそこまで高くなく“就職予備校”として成功している(ように見える部分もある)」というのが実情です。(※学部によります)
総合大学として規模と知名度を誇る近畿大学で世の中を変えたい、新しいビジネスを起こしたい人が“本当に”いるのか確認したくなった。
これがKINDAIサミットに参加した一番大きな理由です。
QRコード決済大手3社が集合
最近話題のQRコード決済サービスを提供する大手三社が集まるセッション「これからのお金のカタチ」があるからです。
- Yahoo(ソフトバンク)[PayPay]
- LINE[LINE Pay]
- メルカリ[メルペイ]
私自身の決済方法がほぼキャッシュレスに移行している。
決済はクレジットカードで行い、QRコード決済が利用できる場合は決済速度が早いため利用できる店舗では積極的に利用している。そのため現金はほとんど持ち歩いていない。
しかし、QRコード決済をしたいが各社のうちどれか一つしか対応していない店舗が多い。利用者としては使いづらいのが現状である。今後どのように規模を拡大していくのか知りたかったので参加したいと考えている。
各セッションの内容と感想
できるだけまとめて書こうと努力しましたが、Rawっぽい感じになってしまいました。そこは愛嬌ということでお願いします:)
【基調講演】学園創立100周年~伝統と改革のその先へ~
【登壇者】世耕 石弘 -Ishihiro Seko-
KINDAIサミットエグゼクティブプロデューサー
近畿大学総務部長
基調講演,オープニングセッションとして近畿大学とはどのような大学なのか、教育機関・企業としてどのように今後動いていくのか、について。
世耕) これから大学はどんどん潰れていく。潰れる大学に進むのか、これからも進化し続ける大学に入るのか。どちらが後悔しないだろうか?
近大サミットの目的
近大サミットは「大学内での横の広がり・発掘をする場所」
単なる就職の延長にあるイベントではなく、規模の大きい大学ならではの縦と横、両方の繋がりを増やすことができる場所である。
また、ここ(近大サミット)に来ている学生は何かを求めてきている(熱くなっている)だろう。ここでの余熱で周りの人も熱くなれば、大学全体で熱くなれるかもしれない。→事例
NEWRON株式会社 代表 西井香織
https://top.new-ron.com
近大サミット第1回から参加
学生団体を結成し、ファッションイベントなどを企画 →赤字計上
マーケティングなどの経営を学習し、起業
近大のすごいとは?
近畿大学は94歳とはいえ、周りの大学に比べれば若造。
だから他の大学とは違う大胆な行動を取ることができる。(広報戦略・施設拡充など)
その中でも事業活動収入は1,356億円で関西地区5位の実力をもつ
河○塾など大手進学予備校が発表している大学偏差値ランキングではなく、世界大学ランキングで判断している。世界的に評価されている大学づくりを目指している。
【パネルディスカッション】新しいお金のカタチ
【登壇者】
- 長福 久弘 -Hisahiro Chofuku-
LINEPay 株式会社 取締役COO
- 青柳 直樹 -Naoki Yanagida-
株式会社メルペイ 代表取締役社長
- 渡辺 武志 -Takeshi Watanabe-
株式会社ソフマップ 代表取締役社長・平成13年法学部卒
- 川邊 健太郎 -Kentaro Kawabe-
ヤフー株式会社 代表取締役社長/ソフトバンク株式会社 取締役
【パネルディスカッション】独創的広報戦略~「見せ方」より「見え方」を見極める!~
このセッションの内容は内容ではなく、抜粋を掲載します。
【登壇者】
- 田中 里沙 -Lisa Tanaka-
株式会社宣伝会議 取締役 メディア・情報統括
- 世耕 石弘 -Ishihiro Seko-
KINDAIサミットエグゼクティブプロデューサー
近畿大学総務部長
- 小澤 隆生 -Takao Ozawa-
ヤフー株式会社 常務執行役員
- 明石 ガクト -Gakuto Akashi-
ワンメディア株式会社 代表取締役
広告と広報は違う
広報戦略は明確な意図を持って実施されている。例えば、
- PayPayは100億円かけた広報を行った。その結果として『QRコード決済はPayPayという方法である』と刷り込みに成功した。
あまり詳しくない人からすると「LinePay」は「LineのPayPay」のように決済システム自体に名前がついているように刷り込むことができた(あくまで一部)
- 某ゼネコンのCM
『「地図に残る仕事」をする』
その業界を目指す人のモチベーション上げに貢献した広報戦略
広報戦略に成功すれば、広報を受けた人は「騙された人」になる。
だからこそ、広報をしないことは「損」であり、損失を発生させる。「伝えたい」ではなく「伝える」ことが最重要。
近畿大学の広報戦略
『早慶近』というフレーズがある
https://www.kindai.ac.jp/archives/2016.html
近畿大学広告アーカイブページ
これは物事を図る尺度を変えた広告で、今までは進学予備校が発表している偏差値で大学を見る傾向があったが、『世界大学ランキング』で私立大学をみると[早稲田大学・慶應義塾大学・近畿大学]しか載っていない(2016)ことを利用して制作したフレーズとなる。
↓
フィールドを変えて戦うことで、単なる一文をパンチラインに変えることができる。
しかし広報戦略を続けるのは非常に疲弊する。でも続けるしかない。
広報は結果がでなくても続ける必要がある。諦めるとそこで終了。今までの努力はほとんど意味を持たない。
自社のコンテンツの強さを見つめて考える(SWOT分析)強みを全面に出して戦うことで他社と差別化できる。
近大卒リーダー×近大生~○○を実現するためのガチプレゼン~
学生が練り上げてきたアイデアを発表し、一番得票を集めたグループに大学側から20万円の助成金を得ることができる。というセッション。
学生グループ5団体が登壇し、自分たちの実現したいコンテンツを経営者が多くいる場所でガチでプレゼンした。
グループ名 | アイデア |
---|---|
404 Designers | オンラインデザイン学習サイトの構築 |
Ruten | 生活拠点シェアサービス |
Space Pitch | 改装済み空き家プラットフォーム |
Velonics | 自転車用ABS機能付きブレーキ |
AGRISE | 選びぬかれたこだわりの生産者と食にこだわる消費者をつなげるマッチングプラットフォーム |
404 Designers
プログラマーを目指す人は増えているが、デザイナーは増えていない。というのもデザイナーを育成する体系づけられたサービスや学習サイトが少ないからだ。デザインを専門に学習するサイトを知っているだろうか?
404 Designersが提案するのはオンラインデザイン学習サービスである。
プログラミング学習と全く異なる点の一つにデザインは一概に評価することができない点がある。その問題を解決するために、このサービスでは積立式の学習体系を提供するほか、TeratailのようなQ&Aサイトのようにユーザがデザインを評価するプラットフォームも提供する。
これらのサービスを組み合わせることで自己流ではない正しいデザイン感覚を養っていく。
さらに、月額料金(サブスクリプション方式)でメンター制度も提供する。起業から利用者にデザイナーを派遣したり、逆に企業からデザイン画を格安で発注することが可能になる予定である。
【所見】
サービス自体がすでに完成しており、デモ用のページを動作してプレゼンしていた。デザインを学習するサイトだけあり、サイトのデザインを含める完成度が非常に高く、興味を持った。デザインを学習したいという需要はたしかにあるが、このサービスが最適かと言われれば微妙だと思わざるえない。
デザインを学習したい人を囲い込んでコミュニティとして動かすことはできるが、サブスクリプションのデメリットである利用ユーザ安定しない可能性があり、継続的に新規顧客を集客する必要があると考えれる。
Ruten
他拠点シェアオフィスサービス
都市部に人は集まり続け、土地はどんどん高くなっていく。生活はどんどん苦しくなっていく。そんな中で近年注目を集めるのが拠点を持たない生活である。
Rutenは大手VCなどが最近投資しているシェアハウス・シェアオフィスサービスを都市部ではなく地方でサービスを展開する、というビジネスだ。
格安で仕入れたエリア(住居・オフィススペース)をプラットフォーム上で予約できるようにする。
【所見】
場所を共有するアイデアは思いもしなかったが、少し考えるとビジネスモデルに不安要素がいくつかある。
- 大手VCが参入できてない地方の土地を無名企業は取り扱えるか
- 初期費用と収益の損益分岐点がかなり遅いが、どのように資金運用をするのか
- 認知度を高めるには多くの場所で展開しないといけないが維持費をどうやって計上するか
私は以上三点が思いついた。全体的に資金関係の話が多いが、資産(空間)を維持するには、それなりの維持費がかかってくる。ビジネスモデルを構築するのがかなり難しいだろう。
Space Pitch
空き家(スペース)を利用したアイデアのマッチングサービス。空き家活用プラットフォーム。
全国にほぼ無限に存在する空き家を利用して、アイデアを発想するための拠点にしようというプラットフォームである。
【所見】
Rutenのサービスと似ている部分が多いのが残念なポイントの一つ。
初期費用がかなり掛かり損益分岐点が遠いことが問題である。
Velonics
ロードバイクは他の自動車と違ってかなりスピードをだすことが可能である。スピードをだした状態急ブレーキをすると車のようにタイヤロックを起こし、ハンドル操縦ができなくなる。
でも、車の場合はABS(アンチロック・ブレーキ・システム)によって、このような状況でもすばやく停止することができる。
自転車にはABSはない?なら作ろう。
Velonicsが提案する「自転車用ABS機能付きブレーキ」はすでに完成している。あとは製造と販売を行うのみだ。
この機能は特許出願可能な全く新しい技術を使っている。プレゼン時もその多くは非公開になってしまった。
自転車市場は海外の方が圧倒的に大きい。そのためターゲット市場は海外とし、大手自転車メーカーが販売するブレーキ(約5万円)と同等の価格で販売する。
「同価格でABS機能が付くのであれば必ず売れるはずだ」とのこと。
【所見】 ロードバイクの大会に参加する知人にこの話を持ちかけたところ、「タイヤロックを起こさないように走るのは当たり前であり、ABS機能をつけることで車重が重くなる方が問題」と言われてしまった。
どうやら機能よりも車重が重たくなる懸念がかなり多いみたいだ。車重がほぼ同じで、ABSの機能をつけることが可能であれば競合他社に勝算がある。
ブレーキの価格だけが勝っているという状況ではかなり難しいと思わざるえない。
しかし、開発がほぼ完了しており、これからマーケティングに専念するだけでいい状況は凄いと考える。どのように販売経路を構築していくのか気になるグループだ。
AGRISE
農業が儲からない理由の一つに「中間搾取」が占める割合が多いことがあげられる。こだわって農作物を作っても搾取によって利益が少ないので、どんどん生産者が減っていく。
しかし、消費者でも食にこだわって購入する人がいる。高級ホテルのレストランなどではわざわざ農家と直接契約をするお店もある。
そこでAGRISEが提案するアイデアが「こだわる生産者とこだわる消費者をつなげるマッチングサービス」だ。
農家/生産者側には安全基準や強みをAGRISE側が監査した上でこのプラットフォーム上に掲載するかを判定する。
消費者側は2つの方法で商品/農作物を手に入れることができる。
- 商品を購入する
- オーナーになる
安全な商品を購入するだけもできるが、AGRISEではオーナー制度を導入している。
オーナーになるとできること
- 作物の販売権利
- 作物の譲渡権利
- 収穫体験をする権利
オーナーになるには
年間契約でみかん木を〜本や、〜平方メートルの農地をレンタルすることができる。そこの作物はオーナーが育ててもいいし、その畑の持ち主が育てることもできる。
できた作物は消費者に売ってそのお金をオーナーが受け取ることや、知人に配るなど自由に使ってもいい。
例)みかんの木は1年間で3万5000円を予定している。1つの木から回収できるミカンの個数を考えると安い。
【所見】
このプラットフォームの本質は上記のような内容ではないと考えた。
『オーナーになるにはお金を払い契約することで労働力(農家の人)を得ることができる。さらにそこで作った作物を販売することで販売利益を上げることや、買った商品を自分たちで消化することもできる。』
すきな食材に投資して、余った分を農家のネットワークで販売することができる。新しい投資の形なのではないかと考えた。